裏路の食堂
なんとなく心の晴れた気分で、
オレには似つかわしくない国際飯店を
【飯店とは飯屋ではなくホテルの意】
出たオレは、
駅へ向かうのに裏通りへ入り、
心の落ち着きを取り戻すため(?)
こぎたない食堂へ入った。
女の子(小学生ぐらいに見えた)が
呼び込みをしており、
オレはそれにまかせて入った。
白衣を着た子と
カラフルな(とはいえ色あせたような)色の
服を着た子(呼び込み専用)とがいて、
白衣を着た子が注文を聞きに着たわけだが、
その子は、オレの対面に座っちまって、
注文を聞きながらも、
「どこから来た?」
などという会話が始まっている。
オレは焼肉とスープとギョーザを頼んだわけだが、
とにかくこのギョーザの量には
驚嘆するものがあった。
オレは残すことができないタチで、
たまたま店の子が食事を始めたようなので
【このときは、客はオレだけ】
「ギョーザを手伝ってくれっ」と
ジェスチャーで勧めた。
オレを連れてきた子が、
それに答えようとしたかにも思えたんだが、
姉さん格の子に制止されてしまった。
こうとなれば、
腰を据えてかかるしかない。
オレはかなりの時間を費やしたが、
このギョーザとの格闘には勝利を収めた。
この間、
カメラを向けたりもしたんだが、
みんな厨房の中に隠れ込んじまってね。
オレを接客(?)してくれてる子に、
【注文を取りに来て、そのまま座り込んでしまった子】
≪彼女のために弁護しておくと、
座り込んだままではなく、
必要に応じて、
立ち上がっては仕事をこなしている。
何しろ、客よりこの子たちの方が多いのだ≫
写真を送るから住所を書け、と、
中国語っぽく書いてみせると、
きたない字【クセのある、と言ったほうがいいか】で
書き始めた。
それからは、
いままでのが、
恥じらいだったのかどうか
わからなくなるほどの積極さで、
カメラの前に並びだした。
大撮影大会である。
どうもオレを連れてきた子というのは
オチョウシ者で、
カメラを奪ってオレまで撮りだした。
オレは、
もう金を使うこともないだろう。と、
ジャッキー・チェン(車掌)と換えた
中国人用紙幣の
【この金は外貨と交換できない】
100元札を出した。
「なぜ外国人なのにこれを持っているんだ」
さすがに気になるようだ。
質すのではなく、
不思議そうに
【100元がもっとも大きな紙幣単位で、
おつりでもらうことがありえないため】
聞いてきたので、
笑ってすませておいた。
駅に向かう途中も写真を撮ったりしたが、
一番撮りたかったのは上海の街である。
窓から長い竿が出され、
洗濯物が干されている光景は圧巻であった。
が、
それを見たのは
ミンさんとタクシーに乗っているときであり、
オレのために奔走してくれている人の隣りで、
観光気分でシャッターを押すことはできなかった。


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