トマレナイ-3-
まず外へ出た。
歩いていると公用電話というものを見つけた。
一柳君らは、予定のない2週間ほどの旅で、
「ミンさんに観光案内してもらったら」
というオレの提案に、
「えぇ、まぁ自分たちで冒険(かいたく)してみますよ。
でも、途中で迷子になってみ~んさ~ん
(情けない口調で)なんて電話かけてたりして」
などと言って別れたきりだが、
その役はオレになってしまった。
電話番のおばちゃんが居る。
いくらか?と聞いてもなんとも言わない。
『金』と書くと、
勢いよくうなずくのだが、なんとも言わない。
そのうちほかのおばちゃんも寄ってきて
【このおばちゃんは単なる知人(やじうま)なんじゃないかな】
とにかくかけろ!と言っているようだ。
電話をするとミンさんは家に居た。
【ミンさんの実家は杭州で、ここは上海のおじさんの家】
とにかく浦江飯店に戻れという。
電話を終え、再度いくらだ。と、聞くまでもない。
指を3本立てている。
まさか3元じゃないだろう。
【探せば夕食が食える】
と思い、
角(元の1/10)や分(角の1/10)を見せると、
全部奪われ、2角返ってきた。
外国人用の紙幣のため不思議そうにしていたが、
後から来たおばちゃんが、
「もらっちゃえ、もらっちゃえ」
そんなふうに言ってたようで、
本当のところがいくらで、
いくら取られたかなんてわからなかった、
【自分がいくら持っていたか把握していない】
が、
100元でも価値はある。
と思い直して浦江飯店へ向かった。
これが8時ごろである。
ホテルを出て1時間になる。
上海の街はうるさい。
自転車は多い、2両編成のバスは通る、
そして、あのクラクション。
オレの耳は特別かもしれないが、
上海のクラクションの音は
「アブナイゾ!」じゃなくて
「ヒキコロスゾ!」に聞こえた。
「中村さん!」
浦江飯店へ着き、少しすると、
階上から一柳・岩崎両君が降りてきた。
説明して、
「困っちゃったよ」
【2人の顔を見てホッとしている】
と言っているところへ3人ほどの外国人が近づき、
【本当はオレたちが外国人】
「Are you waiting for Min-san ?」
【確かにミンさんと言った】
と、声をかけてきた。
たぶん、到着の遅れる自分の代わりに、
少しでも早くと、
友人を派遣(?)してくれたのだろう。
などと思い込んでいたんだか、
本当のところは
ミンさんの帰国祝いパーティが計画されており、
友人との待ち合わせを
浦江飯店に変更してくれたのだ。
ミンさんは、
東京の歯科大学に留学しているのだが
中国へ帰ったら衣料品工場を造りたいと言っていた。
となると、
彼らはそのスタッフになる人達だ。
と、
オレは勝手に決め付けている。
まず、みんな(一柳・岩崎両君を含む)で
夕食を食べに行った。
一柳君は、
「青島麦酒、気にいっちゃったぁ」
などと、すでにハシャいでいる。
彼は船内で飲んで以来、
青島麦酒の虜になっていた。
それからオラオケに移り、
遅くまで騒いだ。
帰ったのは1時半である。
翌朝、
同室の2人に、
「さっそくいいところへ行って
盛り上がってるのかと思った」
などと言われたものだが、
こっちはそれどころではないのだ。


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