本家
日本の体質が
中国の文化を受け入れ続けた産物だと
と、思わされたことが、また続く。
もう、1人になったオレは
代用チケットを改札で見せて、
とにかくホームへ向かいたい。
オレは、
なにしろ時間に終われることが嫌いで、
たとえば待ち合わせ場所へは
他人からすれば感心を通り越して
呆れるほど早く着(い)く。
その場所が長く居られる場所でなければ、
まずその近くまでは移動しておく。
笑い話だが―――
この旅とは違うが、
バンコクから帰るとき、
安いチケットだったので出発が夜中だった。
その日の昼にでも着けばよさそうなものだが、
コトバもできない、
地理もわからない、
ということで前日に
【正確には午前3時発だから前々日か】
空港のある駅まで着っている。
その周辺で泊まるつもりなのだが宿がない。
駅の目の前には立派なホテルがあるのだが、
いかにも高そうである。
それでも10000円ぐらいなら泊まってやろうと
【それまでは約300円の宿に泊まっていた】
勇気を出してフロントで聞いてみると
20000万円ほどだという。
【円に換算してです、以後同じ】
少し歩いてみたんだが
宿らしきものはなく、
どの列車に乗ればいいかもわかったので、
繁華街に帰ろう、
と駅に戻った。
ホームへ向かうオレの背に、
正装したおやじが声をかけてきた。
「安い宿を知っている」
いくらか、と聞けば6000円だという。
「そりゃ高い」
「じゃあ、あのホテルはいくらだと思う?」
と、前のホテルをさす。
「そりゃあそこに較べりゃ安いが、
オレにとっちゃ高いぜ」
とは言ったものの、
一旦10000円を覚悟したオレにとっては
まんざらでもない。
話をしていると、
どうもタダでホテルまで乗せていく、
と言っているようだ。
あやしいじゃねえか。
そういうあやしさというものを確かめることが、
現地へ行く価値だと思っているオレは、
車に乗ってみた。
ホテルへ着くと6000円を自分に払え、という。
「君にか、なぜ」
「いや、分かった」
とドアーを開け
フロントへ案内した。
オレが6000円を出すと
フロントのねえちゃんはとまどった。
「5000円なのに1000円はチップか」
とでも言っていたのだろうか。
オレは言葉が分からず笑っていると、
感謝したような顔をして6000円を受け取った。
オレは人がいいから、
このことに気づいたのは
ポーターと5階に向かう途中のエレベーターの中である。
このやり取りを見ていたこのポーターが
チップをもらうため
なかなか部屋から出ず、
「オレは金がないのだ」
というオレの言葉を
容易に信じなかったことからも、
この推察に間違いはあるまい。
かなり余談が続いた。
実は、このタクシーの中での会話で、
「出発はいつだ」
「明日の夜中だ」
というやりとりがあった。
おやじに、
「じゃあ、なぜもう1日バンコクにいなかった。
向こうなら安い宿もあるし、
そういうところにいたんだろ」
といわれた。
言葉ができれば、
オレは慎重というより極度の心配性(症?)で、
分からない土地では1日の余裕を持って動く、
だいたい帰ろうとしたオレを
引き止めたのはテメエじゃねえか。
といってやりたかったが、
日本語以外は三河弁ぐらいしかできないオレは、
「me too」
といって笑いとばすのが精一杯だった。
上海へ話をもどす。
そういったわけでオレとしては
ホームを確認したかったのだ。
ところが入れてもらえない。
オレの代用チケットを見ると
≪26日17時38分次No.1≫とある。
間違っていないのだ。
ところが彼が指摘したのは有効期限である。
そこには≪22日≫とある。
そして、
「書き換えてもらってこい」
そんなことを言っているのだろう。
CITS事務所へ行き訴えると、
ボールペンで≪26日≫と
上から太く書き直しただけである。
バカにしたもんだ。
と思いつつ、
日本のお役所仕事を思い出しながら
改札で差し出すと、
彼はまだオレがホームへ入ることを許可しない。
時間的に「まだ!」だというのだ。
ムッとしたが、
本家はすげえや。
と思い直した。


コメント