トマレナイ -2-
フロントで【ご自由に】といった感じの地図を拾い、
オレはホテルを出た。
一柳・岩崎両君の泊まる
浦江飯店へ向かうためである。
地図で、いち早く【浦江房覧】を見つけたオレは
丸印で囲み、
それを指しては道行く人に訪ね歩いた。
が、
たどり着くはずもない。
オレの目指すべきは【浦江飯店】なのである。
しかも、CITSのおやじには、
「浦江飯店はかなり安い宿だ」
(オレの泊まるはずだったホテルに較べてということなのだろう)
などと聞かされていたんで、
裏の細道ばかりを探していたのだ。
ラチもあかず、
ネオンを見つけ、
「ヨシッ、この店で電話を借りよう」
そう意気込んだ隣りに【浦江飯店】と光るネオンが見えた。
フロントで聞くと3B-3だという。
3階だろうと上がってみると、
そのフロアーの案内がかわいい娘だったので、
ドアーを見て歩けばわかりそうなものを、
わざわざ聞いてみる。
通じたのか通じないのか
「get out」という。
最初はそれすら聞き取れていない。
階段を指しているので、
上だとか、下だとか言っているものと思い、
下に行って聞いてみると、
どうもフロアーには違いはないようなのだ。
戻って聞いてみるんだが、
どうもこっちの血相がスゴイようで、
すっかり怯えちゃってる。
そんな自分の顔つきに気づいて、
「どうしよう。わかんないよねぇ」
日本語で、
笑いながら言ってみた。
すると向こうも笑い、
しばらくすると、
「フレンド?」と、
聞いてくれたりしてお互いが冷静になった。
そして「get out」は
外出していますってことなんだ。
と、悟った。
オレはこの旅の初日で、
旅のコツをつかんだ。
笑顔は最高のコトバだ、と。
こんなことがあったため、
オレはずうっと、
笑顔と日本語で通した。
努力の嫌いなオレは、
外国語を覚えるなんて、
一番避けたい分野だからね。
そして、今思うに、
笑顔は旅のコツではなく、
人生のコツと言っていいように思われる。
険しい顔して自分の主張をしたところで、
相手は理解しようとは思ってくれない。
たとえ相手が引いたとしても、
それは、理解したのではなく、
恐れであったり、
面倒になっただけのことだから。
しかし、このときのオレは、
旅のコツを知りえた喜びに
浸っているわけにはいかないのだ。


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